盛岡市先人記念館

盛岡市先人記念館 > 講座・ワークショップ > 【事業報告】第71回企画展「鈴木彦次郎 岩手の文化の育成者」

講座・ワークショップ詳細

この講座・ワークショップは終了しました。

【事業報告】第71回企画展「鈴木彦次郎 岩手の文化の育成者」

令和7年(2025)に鈴木彦次郎が没後50年を迎えたことを記念して、6月28日(土)から8月31日(日)まで、第71回企画展「鈴木彦次郎 岩手の文化の育成者」を開催しました。

 

■鈴木彦次郎は、明治31年(1898)12月27日、東京市深川区(現在の東京都江東区深川)に生まれました。彦次郎は5歳の頃、父・鈴木巌の帰郷にともない一家で盛岡に引越し、18歳までの少年時代を盛岡で過ごしました。岩手県立盛岡中学校(現在の岩手県立盛岡第一高等学校)を卒業後に上京、第一高等学校(現在の東京大学)、東京帝国大学に進学しました。帝大時代には、川端康成、石濱金作、酒井眞人、今東光とともに文学同人誌・第六次「新思潮」を創刊し、本格的な文学活動を始めました。
帝大卒業後は東京で文筆活動に専念しました。しかし、太平洋戦争はじまると彦次郎が住んでいた東京府荏原郡(現在の東京都大田区大森周辺)は疎開の対象地域となり、一家は巌の勧めで盛岡に帰郷します。
盛岡では執筆活動を続けながら、岩手県立図書館の館長や、岩手芸術協会の副会長、文芸誌「北の文学」やタウン誌「街もりおか」の編集委員などを務め、岩手・盛岡の文化の発展に尽くしました。

鈴木彦次郎著『七月の健康美』『両国梶之助』、雑誌「文芸時代」「富士」など

第六次「新思潮」創刊号、講義ノート

 

■彦次郎が発行した単行本のほか、「新思潮」「文藝時代」などの文芸雑誌、相撲専門雑誌「富士」、新岩手社発行の少年向け雑誌「友達」といった、彦次郎の作品が掲載された雑誌を展示しました。直筆原稿、執筆メモ、講演メモも多数展示しました。彦次郎の執筆時の筆遣いや、推敲の過程がわかる貴重な資料です。

 

■展示室には、IBC岩手放送よりお借りした音声・映像の視聴コーナーを設けました。先人の声や動いている姿を見られる貴重な機会となりました。

彦次郎が中尊寺の貫主を務める今東光にインタビューをした際の映像

 

■アンケートでは「文化を育む風土、その中で彦次郎が多くの作品を残し、様々なジャンルや人を育てていったんだなあと改めて知ることができました」「こんなに広いジャンルの作品を書いていたとは知らず、読んでみたいと思いました」「さまざまな面から鈴木彦次郎の業績を知ることができました」などの感想をいただきました。彦次郎の生涯と、彼の生み出した作品に興味を持っていただける展示になったと思います。

■彦次郎の作品は当館だけではなく、県内各地の図書館で読むことができます。また、今回ご協力いただいた盛岡大学図書館では、彦次郎に関する図書・資料を多数収蔵し「特色ある蔵書コーナー」でその一部を紹介しています。ぜひ、足をお運びください。

 

●企画展オープニングイベント 鈴木文彦氏によるギャラリートーク
令和7年6月28日(土)
企画展初日に、鈴木彦次郎の長男・鈴木文彦氏をお招きし、オープニングイベントとしてテープカットとギャラリートークを開催しました。たくさんのお客様にご来場いただきました。

オープニングイベントの様子

 

●企画展関連講座「作家としての父 鈴木彦次郎」
講師 鈴木 文彦 氏
令和7年7月12日(土)
鈴木文彦氏は長年、編集者としてご活躍しています。講座では、彦次郎とゆかりのある作家とのエピソードや、息子の視点から見た彦次郎についてなど、家族だからこそ知るお話を紹介していただきました。また、文彦氏が出会った作家たちのお話も豊富で、日本の文学界の一端を知る楽しい機会となりました。

 

●学芸員講座「鈴木彦次郎と岩手」
講師 当館学芸員 坂本 志野
令和7年8月2日(土)
彦次郎の生涯について、昭和19年の盛岡疎開後を中心にお話ししました。彦次郎が綴ったエッセイから岩手との関わりにまつわるものを抜粋し、本人の言葉でお伝え出来たのではないかと思います。

 

最後になりますが、企画展に足を運んでくださった皆様、展示にご協力くださった関係者の皆様、ご親族の皆様、誠にありがとうございました。

講座・ワークショップ一覧に戻る